エンジニアとしての生き方

エンジニアとしての生き方  IT技術者たちよ、世界へ出よう! (インプレス選書)

著名なブロガー・プログラマー中島聡氏の著作。中島氏の存在を知ったのは、たまたま会社の先輩のブログからリンクを見つけてのもの。その時のエントリーはあまり興味を引かなかったのだが、他のエントリーを見るに連れて、徐々に引きこまれていき、今では、心の師なる存在。

SIerという業界で働いていると、そもそもエンジニアという存在が異質なものなのでストレスを感じる部分も多いが、自分がそもそも信じているエンジニア像、技術に非常に長けて、企画・センスもあるというキャリアイメージを具現化してくれる存在。

学生時代に大学の学術情報センターでアルバイトした経験から言うと、大学規模のシステムでも管理者は20人弱。20人で学内の数百台のPCをの管理から、学内外のネットワーク、ファイルサーバ含めて管理していた。外注も一切なしで、(と言っても、ハードの初期セットアップは委託していたが)、事務所にはオライリーが山ほど並んでいる。ICカードからプリントするシステムが2001年時点で内製で運用していたり、ブートローダーも作ってしまう。

そんな環境を見るに、プログラマとしては到底活躍できないだろうと思い、SIerという少し業務寄りなところへ就職したつもりだったが、方やプログラミング言語を大して知らない1~2年目が動くものを書いてしまうエンタープライズな開発に愕然としたことも思い出す。それでも、それじゃいかんと思い、技術書を漁ったりもしたが、やはり、仕事上そこまで求められるケースはほぼ無く、ギャップに悩む事も多い。ただ、SIer、SEに関する以下の記述になるほどなと思わされるし、進むべき方向を暗に照らしているようにも感じる。

私の理解では、SEという職業はレストランに例えればウェイターである。それも、メニューから料理を選んでもらう通常のレストランとは異なり、「客の注文するものなら何でも作る」という個別注文レストランである。

そんなレストランであるから、客の注文もさまざまである。「豚のしょうが焼き定食」と料理を指定する客もいれば、「今が旬の魚を使った寿司」とか、「ご飯のおかずになるものなら何でもいいけど、コレステロールが気になるから野菜を多くしてね」という漠然とした注文も来る。ウェイターの役目はそれぞれのお客さんに満足してもらうには、何を作るのが一番良いのかを見極めて、キッチンに伝えることである。

難しいのは、客が必ずしも料理に詳しくはないので、真夏に「生牡蠣が食べたい」などと無理を言って来る客がいることである。そこを相手の自尊心を傷つけずに、「お客様、今は8月なのであいにく生食に適した牡蠣がございません。牡蠣フライではいかがでしょう」などと客を説得しなければならない。そういった仕事をちゃんとせずに、「生牡蠣一人前!」とキッチンに伝えてしまうと、料理人たちからは、「あのウェイターは料理のことが分かっていない」と非難されてしまう。

優秀なウェイターになると、客の好みや健康状態、季節の食材、キッチンにいる料理人の得意料理、各料理にかかる時間、食材のコスト、などが全て頭に入っているために、客にも喜んでもらえるし、キッチンからは信頼される。そんなレストランの客席はいつも満足げな客で一杯だ。

これが私の理解する「SEの役目」である。客に満足したソフトウェアを提供するという意味で、SEという職業はものすごく重要ある。ソフトウェアエンジニアとどちらが上か、などということは決してなく、それぞれに「客が何を本当に必要としているのか見つけ出す」、「受けた注文に基づいて作る」というそれぞれに重要な役割を果たすだけのことである。

会社ではやれ鉄人など、技術マニアなど、といった呼ばれ方をするが、世間を教えてくれる名著。願わくばもっと前に出会いたかった本。これも殿堂入り。

うちの部員にも読んでもらいたい。。。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です