決断力以来の2年半ぶりの羽生さん本。決断力は将棋を通して語られる、洞察の深さ、また将棋に留まらない業種の交流に心酔したものでした。
で、この一冊。
SE35歳定年説を吹き飛ばしてくれる下記の記述に心を奪われた。
がむしゃらに読み込む力は、年齢が若い棋士が上だが、熟年になると、この「大局観」で逆に「読まない心境」となり、勝負の上で若い棋士とも互角に闘える。
若い棋士は、良い手も悪い手も、たくさんの可能性を探しがちだが、ベテランになればなるほど、僅かな候補に絞って熟考を重ねるようにもなるらしく、捨てる技術が増すとか。そして、その捨てる技術を負けた後に如何に見直し修正できるかが、棋士の違いになるとも。
将棋のプロの世界はA級は10名しか存在せず、他のスポーツと比べても極端に年齢層が広い。そんな中、長期に渡り第一線で活躍した人の言葉は非常に重たいし、共感を生む。
本を読んでいると、そのうち書けるのではと思わせられるような本もあるけれども(と、言っても書けるような内容ではないのだが)、いくら経っても辿りつけないような境地に感じさせられてしまう、この本は、殿堂入り。