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凛と咲く  なでしこジャパン30年目の歓喜と挑戦。

凛と咲く なでしこジャパン30年目の歓喜と挑戦

サッカー本では久々のヒット。いや、過去最高かも。28年目のハーフタイムでスポーツノンフィクションにどっぷりとつかり、今まで数えきれなくなるほど、読んできたけれども、久々に読んで気持ちよくなる一冊。ワールドカップの結果は確かに良かった。一つの結果を複数の選手のコメントと自身の取材をもとに記載している構成も良い。そして不遇の時代から長年取材を続けた事による選手との信頼関係も素晴らしい。

ただ、何より女子サッカーに対する、選手に対する愛情にあふれている。

不遇の時代から取材を重ね、女子サッカーのブームに一喜一憂し、ピッチの外から見守り続けてきたからこそ書ける一冊。

ドイツ戦後のテレビのインタビューの収録前に「真理さんやったよ!!」と語った丸山。

ワールドカップ終了後のドイツの空港のお土産屋で「予定より長くなっちゃって、すいませんね~」と声をかけた近賀。

選手との信頼を感じさせるエピソードは事足りず、それでいて、著者の存在が邪魔に全くならない文章。そして選手の信頼関係やチームワークもどこの雑誌より、本よりも詳しく深く書かれている。

文庫版が出るほどに売れて欲しい一冊。今年のMyBookランキングNo1は確定です。

3-4-3 究極の攻撃サッカーを目指して(杉山茂樹)

気がつけば4ヶ月近く更新してませんでした。本を読んでいないわけではなく、ネタはあったんだが、どうにも筆が進まなかった。ということで、また気の向くままに更新します。というわけで久々の更新は軽いこいつから。

3-4-3 ~究極の攻撃サッカーを目指して~

サッカーの評論との出会いは1996年の杉山茂樹のナンバーの記事が最初。たしか、当時はファルカンから加茂監督でしばらくした後で、名波が代表に定着し始めて、緩やかにドーハ組からの世代交代が行われていたころ。当時は、ゾーンプレスと呼ばれ一斉を風靡していた?4-2-2-2をバッサリ切り捨ていたのが、杉山茂樹の記事だった。

記事の内容も的を得たように感じ、4-2-2-2でプレスを掛けようとすると、中盤の人数が少ないこと、ベンゲルの4-4-2や、フリューゲルスだったか4-5-1に近いフォーメーションと比較しての構造的な考察を、選手のインタビュー-特に4の前の2の負担が大きいことや、サイドバックが参加しないと攻撃とならない-を元に上手くまとまっていて、目からウロコだった。

当時は監督批判すら珍しく、新しい視点に感動を覚え、以来戦術、サッカーの仕組みに取りつかれていくことになる。

という過去の経緯もあり、また、前著4-2-3-1もそれないに楽しめたので期待して買ったのだが、正直がっかり。

そもそもフォーメーションを語る本なのに、ところどころに出てくるフォーメーションの図が文章と上手くつながっていない。編集者がサッカーを知らないのだろう。微妙なギャップを描くこともなく、ピッチの絵の上にマスゲームの如く左右対称に並べられた選手の名前が並ぶだけ。

せっかく、いくつかのゲームを題材にピックアップして解説しているのだから、両チームのフォーメーションを一枚の絵にして、ギャップを図示すれば臨場感も溢れ読みやすいのだが。

また、試合の記述に臨場感が全くない。著者の1人称で物語は進むのだが、淡々とした評論となっており、物語に入り込めない。一部、関係者の一言の記載はあるのものの、インタビューや様々な人の声があまりに小さい。

「第7章 なぜ日本代表に3-4-3が必要なのか」にしても、押しは弱い。

ポイントとしてあげられているゲームは、見たゲームが多く、また鮮烈な印象を残しているゲームばかり。2002年のワールドカップの韓国は現地で生観戦をして、日本サッカーが10年置いていかれたような鮮烈な印象を受けたし、2005年のチャンピオンズリーグ決勝で0-3からミランに逆転勝ちしたリバプール、1994年のワールドカップ準々決勝のブラジルVSオランダに、ユーロ2004のチェコVSオランダ。普通であればゲームのイメージに文章・図がオーバーラップして、流れる水の如く読めるはずなのだが、文章力の問題なのでしょう。本に入り込めません。

氏の文章には期待が強かっただけに、残念ながらがっかりな一冊でした。サッカー書籍を15年以上読んでいる私には物足りない内容でした。

信頼する力 ジャパン躍進の真実と課題

信頼する力 ジャパン躍進の真実と課題 (角川oneテーマ21)

レビューはまだ書けていませんが、中澤佑二 不屈で振り返られているワールドカップとあまりに異なる印象を受けます。

  • 最後までチームの主力として信頼を受けた選手と、キャプテンを後退させられた選手
  • ポジションも性格も全く異なる二人

というとことからも違いがあるのかもしれませんが、2010南アフリカワールドカップを振り返り、検証したい人は両方読むべきでしょう。

中澤本では監督に対する不満が赤裸々に語られている一方で、遠藤本では大きな信頼が書かれている。

ザースフェーでのミーティングも、中澤本では議論がモメるもトゥーリオの一言でまとまったとなっている一方、遠藤本では攻撃陣と守備陣で意見の対立があって議論がまとまらなかったなど。

まとまっていたのは間違いないチームでも、印象が全く異なるように書かれている点はやはり、両方読んで初めて分かること。

またオシムが評価する遠藤評と、本人がオシムからうけた影響、この双方を比べてみると、語っているポイントはいずれもいかに危険な箇所に入り込んでいくか、ゴールを奪うか、という点を共に挙げている一方で、方やオシムは不足を感じ、方や遠藤は成長を感じで、まだまだ遠藤自身の目線が低いように感じさせる点も面白いです。

日頃、Numberなどでもあまり詳細を語らない遠藤だけに、一冊で読み終えてしまうには、あまりにも勿体無い、新たな事実が読み取れる本です。

黒いワールドカップ

帯は強烈だった。

ドイツ、イタリア、フランス、スペイン、ロシア・・・。世界各言語で翻訳されているインターナショナルベストセラー 待望の日本版。八百長サッカーの実態を追い求めるジャーナリストが世界各地を駆け巡った衝撃のノンフィクション

前書きもなかなか良かった。

特にオリンピックの日本代表チームが関係する試合で八百長をしようとしたことについて、フィクサー自身が語っているからだ

でも山場はそこで終わってしまった。

外人のノンフィクションだからなのだろうか。。。リズムがとかく咬み合わない。読みたいリズムと全く合わない。ニュースになったように八百長問題がヨーロッパで盛り上がったことをしってるけれども、本を読むには盛り上がらない。

結局全部読むことなくお蔵入り。マジック・ジョンソンのマイライフ以来のがっかり作。。。

黄金世代

1979年生まれとしては外せません^^。

1999ワールドユースの準優勝から丸10年。メンバーのその後を描いた作品。

おそらく何かしらの雑誌の連載を再構成した模様。個人的には初見だし、これだけの選手の数のインタビューを集めた本だし、10年前の成功後、当時期待したほど伸びなかった事などを再考するには、ということで購入。

当時は「あれまた勝っちゃった」という印象が強かったけど、試合見ていて思ったのは

  1. ボール運びが格段にうまい点
  2. 本山が切れ切れ
  3. 右サイド酒井の運動量が凄い
  4. 最終ラインが破綻していない(除く決勝

当時の目線では、小野や高原よりも小笠原が効いていたイメージがあったし、やはり兎に角、本山。

あれほど、試合の中でキレを見せたドリブラーは、ほぼ皆無。200?年のワールドユースの家長は良かったかな。。。

その後、

期待以上に伸びたのは、遠藤、加地、播戸

期待通り伸びたのは、高原や稲本(ベンチ)、小笠原、永井

期待ほど伸びかったのは、小野、本山、小笠原、中田、酒井、手島

あの時代をもう一度語りたい人には良いかと思います。

 

オシム 勝つ日本

激務で書評が全く進まず。コンサルタントの秘密から、10冊以上はたまってる(汗

この本は5月発売の第三版を買ってるから、多分購入したのもワールドカップの前、と書いててそういえば、ワールドカップが始まった頃に読んだこと思い出した。

数あるオシム本の中では、少し現場を離れた目線が増えているが、それもこれも、田村修一が本質に迫るインタビューをしたからこそ。田村修一自体はNumberのインタビューでトルシエに取材していたことから非常に好きだったので即購入。

オシムの言葉」以降、数多出版された本に比べるとクオリティーは高いとは思うが、じゃあ、もう一度読み返すか、と思うと疑問が残る本。「オシムの言葉」にあるような今までの苦労や歴史が残っている訳でもなく、ワールドカップ直前の日本に大してのコメントがメイン。

正直、良い意味でも悪い意味でも、もうオシム本は良いかなという気にはさせてくれた一冊。